エンターテインメントの歴史はテクノロジーの進歩や変化と密接な関係を持っている。古くは無声映画がトーキーになったように、レコードがCDになったように、MTVの登場が音楽表現を変えたように、いつの時代も新しいメディアが、アーティストの意識や作品に影響を及ぼしてきた。

ここ数年のそんな変化の一つにハイビジョンがある。

お茶の間でご覧になっている方は、そこまでの意識はないかもしれないが、プロモーションビデオやライブ映像、言うまでもなくテレビの番組に至るまでハイビジョンの影響はかなりのものがある。

従来の方式とは比較にならない解像度と色彩感の豊かさ。ハイビジョンになって一番忙しくなったのはメイクさんという冗句が誇張ではないくらいに微妙な肌の色や顔の表情を鮮明に映し出してしまう。

ただ、ハイビジョンで撮影された映像でも受像器がそれに伴っていないと、その特性が生きるとは言えないだろう。それがブルーレイデイスクである。DVDの6倍から7倍という記録容量は当然のことながら、その数倍の色彩表現の質感や緻密さを可能にした。映像だけではない。音の質的な向上も加わった。

このシリーズは、これまでにハイビジョンクオリティで撮影された映像作品を一挙にブルーレイ化した画期的なものだ。

驚くのは、15タイトルの中に、92年のツアーを収録した「CONCERT MOVIE GUYS」と、93年の「夢の番人 SPECIAL EVENT1993 GUYS」が入っていることだろう。

CHAGE and ASKAは“音楽の映像化”に一早く本気で取り組んでいたアーティストだった。コンサートのオープニングで流されるドラマ仕立てのショートムービーやライブ中の映像。彼らにとって初めてロンドンで全曲レコーデイングされたアルバム「GUYS」は、現地で制作されたプロモーション映像も画期的な質を備えていた。「CONCERT MOVIE GUYS」はそんなエポックメイキングなツアーの様子を35mmフィルムで収めたムービー、つまり映画だった。

それも、デジタル登場以前にアナログハイビジョンで撮影していたということが、彼らの先取り感覚を証明している。それが、ようやく日の目を見ることになった「夢の番人 SPECIAL EVENT1993 GUYS」では、7曲もの未収録曲が加えられた。これまでは宝の持ち腐れだったと言って過言ではなさそうだ。

全15タイトルは、そのまま彼らの2000年代以降の記録だ。その間には記念すべき25周年のツアー「CONCERT TOUR 2004 two-five」やそこにかかわる二つのイベント、札幌ドームでのカウントダウンライブやお台場で行われた「25th Anniversary Special チャゲ&飛鳥 熱風コンサート」もある。アーティストして脂の乗り切った時期の二人のライブは、改めて彼らが唯一無二の存在であることを強烈に印象付けるはずだ。

それだけではない、ChageとASKAの実績や栄光に安住しないそれぞれの冒険や実験の場であるソロのステージ。CHAGE and ASKAでは見せない音楽的な素顔や嗜好がもたらす発見の連続。その先に再び二人が出会う姿を夢見ることは限りなく楽しい。

Chageはこのブルーレイ作品について「汗の粒や、ギターの弦のしなりや揺れまで見える」と驚いていたそうだ。コンサートの臨場感はその会場でしか味わえない。でも、会場では得られなかったライブ感もある。手に取るように見える汗や心臓の鼓動まで伝わってきそうな息づかい、客席から立ち上る熱気やオーラ。一瞬にして世界を変える照明の効果。大画面で見る、大音量で聞くからこそだろう。

ビデオからDVD、そしてブルーレイ。音楽の楽しみがまた新たな進化を遂げることになった。

文:田家秀樹